メジコン=デキストロメトルファン(市販されている咳止め薬)の新しい使い方へ期待しています。
みなさま、こんにちは(^^)
薬剤師歴20年以上、子育て真っ只中のたまさんです。
今日は、市販されているデキストロメトルファンという、咳止め薬について、いち薬剤師が認識している情報をお話します。
デキストロメトルファンとは何の薬?
デキストロメトルファンとは、医療用医薬品では、先発薬メジコンです。
聞いた事があるのではないでしょうか?
1958年に米国で非麻薬性鎮咳薬として市販され、日本でも大人から子供まで広く使われてきています。代表的な咳止めであり、市販薬として販売もされています。
デキストロメトルファンは非麻薬性鎮咳薬
非麻薬性とはどういうこと?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、デキストロメトルファンは、オピオイド骨格を持っていて、モルヒネ誘導体から合成された薬物です。
オピオイド骨格を持つとは…多くはオピオイド受容体に作動する薬剤です。医療用語と一般的に認識される意味と少し異なりますが、モルヒネやコデインのような「麻薬」に該当する薬剤です。
鎮咳、鎮痛、呼気抑制、多幸感、依存性、の作用を持ちます。
ところが、デキストロメトルファンは、レボルファノールという強いオピオイド作用を持つ成分の異性体でありながら、オピオイド受容体には作用しないので、鎮痛作用や依存性はほとんど持ちません。また呼気抑制もありません。
シグマ受容体やNMDAを介した作用を示すので、鎮咳作用を持ち、安全に使われています。
それが、非麻薬性鎮咳薬と言われている理由です。
デキストロメトルファンの作用
シグマ1受容体作用
延髄に存在するシグマ1受容体作用により咳中枢を抑制し、鎮咳作用を示します。乾いた咳には向きますが、たんの絡む咳には不向きです。
NMDA受容体拮抗作用
NMDA受容体とは、グルタミン酸が作用し神経興奮を示しますが、それをデキストロメトルファンが拮抗して抑えます。これにより神経興奮を抑え、鎮咳、抑うつ効果を示します。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用(SNRI様作用)
高用量で脳幹の神経伝達を介してセロトニン作用を示します。つまり、抗うつ効果を示します。
高用量でセロトニン作用が増強しますので、セロトニン症候群に注意が必要です。
抗うつ効果が米国で承認
先に述べたように、デキストロメトルファンには高用量で、脳幹でのセロトニン作用=抑うつ効果があることがわかっています。
一方、ブプロフィンはデキストロメトルファンの代謝を遅らせる作用があり、より効果的にデキストロメトルファンが作用するように働きます。
デキストロメトルファン+ブプロフィンの組み合わせにより、デキストロメトルファンの作用を効率的に働かせる事が可能であり、2022年米国でデキストロメトルファン+ブプロフィン配合薬が大うつ病障害への治療薬として承認されました。
現在大うつ病障害への治療薬として日本で使われているSNRIやSSRIは、効果発現までに2週間以上時間がかかりますが、デキストロメトルファン+ブプロフィン薬は、1週間程度で効果が発現するという大変有用な効果を持ち、期待されています。
日本では?
残念ながら、まだ、承認されておらず、市場には出ていません。
抗NMDA薬+ブプロフィンという点では例がなく、新しい検証が必要などの点から、もう少し時間がかかりそうです。
最後に
しかし、メジコンを高用量で使用した時に、抗うつ作用=セロトニン作用を持つという事は、認識する必要があります。
たとえば、セロトニン作用の抗うつ薬を服用されている方は、風邪薬として咳止めのデキストロメトルファンを服用すると、セロトニンの作用が強く出るセロトニン症候群へのリスクが高まります。咳止め薬の選択には注意が必要になります。
咳止めとしては有名ですが、抗うつ効果があることはあまり知られていないかもしれません。


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