こんにちは。薬剤師歴20年のたまさんです。
本日は、こむら返りの薬として有名な、芍薬甘草湯についてお話します。
芍薬甘草湯って?
赤いツムラの68番といえばご存知な方も多いのではないでしょうか。こむら返りが起こった時の他のどの薬よりも、こむら返りには効果的に反応を示します。前もって服用して備える事もできるし、即効性があるのでこむら返りが起こってから服用しても有用です。
こむら返りとは
まず、こむら返りとは何かを簡単に説明します。
こむらとはふくらはぎの事を指しますが、こむら返りは全身に起こります。
筋肉が突然収縮して、元に戻りにくくなった状態をこむら返りといいます。
筋肉の収縮とは
では、筋肉の収縮はどのように起こるのでしょうか。
➀運動神経からの刺激で、筋小胞体からカルシウムイオンが放出されます。
②筋原線維にはアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが交互にならんでますが、アクチンフィラメント上のトロポニンに、放出されたカルシウムイオンが結合します。
③カルシウムイオンが結合すると、アクチン、ミオシンフィラメントの間に連絡橋が形成され、2つの線維の滑り込みがおき、収縮が起こります。
芍薬甘草湯の働き方
このような仕組みで筋肉は収縮しますが、芍薬甘草湯が、どのようにして効果を発揮しているのかお伝え致します。
芍薬甘草湯の成分
芍薬甘草湯の成分は、芍薬と甘草の2種類です。
医療用で使われるツムラの芍薬甘草湯は、シャクヤク6.0g、カンゾウ6.0g/3包となっています。
シャクヤクの働き
シャクヤクに含まれるペオニフロリンが、筋小胞体からのカルシウムイオンの動きを阻害することにより、筋収縮を抑制する。
カンゾウの働き
カンゾウに含まれるグリチルリチン酸が、カリウムイオンの細胞外流出阻害作用により筋弛緩作用を示す。
芍薬甘草湯は、カンゾウとシャクヤクの相互のさようにより、優れた筋弛緩作用を示します。
芍薬甘草湯の優れている点
芍薬甘草湯の優れている点についてお話します。
先にも書きましたが、即効性とするどい効果により、こむら返りの薬として右にでる薬はありません。
また、他の筋弛緩作用のある薬は、中枢抑制作用(ねむけ・めまい)や、長期連用により筋力低下、が副作用として問題となりますが、芍薬甘草湯は中枢抑制作用、筋力低下共に確認されないようです。
芍薬甘草湯の注意が必要な点
芍薬甘草湯の注意が必要な点についてです。
ツムラ芍薬甘草湯には、カンゾウが2.0g/1包含まれ、3回で服用すれば、1日6.0g摂取することになります。
カンゾウに含まれるグリチルリチン酸は、コルチゾールの作用を増強させ、多量に摂ると偽アルドステロン症を招きます。偽アルドステロン症とは、低カリウム血症、動悸、高血圧、むくみ、力が入らないなどの症状が出ます。放置すると意識消失することもあります。
カンゾウは、多くの漢方薬に入っていますが、芍薬甘草湯に含まれるカンゾウは、ダントツに多いです。漢方を複数種類重ねる時は、カンゾウの総量に注意し、1日2.5g以上の場合は注意が必要になります。
ですから、特に高齢者は、芍薬甘草湯を頓服、もしくは1日1包程度までに抑えて使う事が好ましいです。
最後に
激しい痛みを伴うこむら返りの救世主として芍薬甘草湯があることは、とても心強いですね。ただ、漢方ではありますが、その中でも副作用に注意が必要な〝刺激的な薬〟です。気安く服用するのではなく、医師や薬剤師に確認しながら服用することが大切です。
参考文献


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