ナイアシンの役割〜キヌレニンとの関係〜

健康

こんにちは。薬剤師歴20年子育て真っ只中のたまさんです。

今回はナイアシンという栄養素について、いち薬剤師が認識している情報をお話します。

ナイアシンとは、水溶性のビタミンB群であり、ニコチン酸やニコチン酸アミドの総称です。生鮮食品の加工の段階や消化管での分解により生成されたり、体内ではトリプトファンから合成されます。

ナイアシンは、補酵素として各種エネルギー代謝に幅広く関与しており、皮膚粘膜の改善、脳神経の活性化、血行促進、DNA修復などあらゆる所で使われています。

特に最近注目されているナイアシンの効果についてお話します。

1.トリプトファン代謝

ナイアシンは、食物の消化による他にトリプトファンから合成されます。

トリプトファンの代謝では、セロトニン経路とキヌレニン経路と2つにわかれますが、セロトニン経路は1%のみ、99%がキヌレニン経路をたどります。

➀キヌレニン経路(亢進するとよくない)

キヌレニンは、過剰になると、神経毒性やがんの免疫抑制などよくない作用も持っています。キヌレニン経路により、エネルギー代謝に関与するナイアシンが生成されるので重要ではありますが、バランスを崩すと、健康にとってよくない作用がでてきてしまいます。

また、慢性炎症や、ストレスが、キヌレニン経路を活性化することもわかっています。

②セロトニン経路

トリプトファンの代謝では、1%のみセロトニンを合成します。

セロトニンは大半が腸で生成され体内で作用しますが、1/10のみ、脳内でセロトニンが合成され、脳内セロトニンとして働きます。脳内セロトニンは、気持ちの安定に働き、さらに睡眠ホルモンであるメラトニンが生成されます。

以下図に示します。

2.ナイアシンと睡眠

ナイアシンを摂ると、良い睡眠につながる、という話は聞いたことがあるかもしれません。

生体には恒常性を保つ機能があり、過剰になれば生成を抑え排泄を促してバランスをとる作用が働きます。

サプリなどでナイアシンを充分量摂取すれば、これ以上沢山要らないという、ネガティブフィードバックが働き、キヌレニン経路の動きが抑制されます。

このため、トリプトファンの代謝はセロトニン経路に多く傾き、脳内セロトニン→メラトニンの生成が増えるわけです。

このため、睡眠ホルモン(メラトニン)や、気分安定のホルモン(脳内セロトニン)が多く働き、よい睡眠をとることができる訳です。

3.ナイアシンによる抗うつ効果に期待

ナイアシンには、うつ病によい効果があるのではないか、と言われています。

それは、上記で説明した理由によると考えられています。

脳内でのセロトニンの働きが向上することによるわけです。

また、統合失調症の認知機能への改善効果もあると言われています。

4.キヌレニン経路の変容

キヌレニン経路を抑えるネガティブフィードバックや、慢性炎症やストレスがキヌレニン経路を亢進する、等、キヌレニン経路に変容が起こることが、健康へさまざまな影響を与える事がわかってきました。

慢性炎症やストレスがうつ病のリスクのうちの1つとなるのは、脳内セロトニンの生成が抑えられているからですね。

近年、このキヌレニン経路の変容を利用した精神科領域への創薬にも期待されています。

5.最後に

ナイアシンはうつ病、統合失調症を治すという力はありません。あくまで、補助的な栄養素ということです。また、水溶性のビタミンなので、過剰に摂りすぎるということはないですが、一時的にナイアシンフラッシュという火照りを伴う反応が出ることもあります。持続的なニコチン酸アミドの形で摂れば、ナイアシンフラッシュは避けられそうです。

いずれにしても適正量を守りながら、健康のために、うまく活用していきたいですね。

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